創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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現地研修会は、地域医療関係団体や地方自治体等が推進する保健・医療・福祉事業及び健やかな長寿社会づくりなどに貢献することを目的として、全国各地において開催してきた。1983年(昭和58年)に大分県大分市で開催された現地研修会「腹部エコーの基礎と臨床」が第1回であり、2011年(平成23年)度末までに369回実施された。この10年間の開催状況をみると、年に10〜18回開催し、参加者総数は約1,400〜2,600人で推移している。高齢化と少子化、さらに医師不足など地域社会を取巻く環境が大きく変化する中で、自らの健康をいかに維持・増進していくのか、子どもの成長をどう見守っていくのか、疾病といかに向かい合っていくのか、限りある医療という社会的資源をどのように利用していくのか、等々の様々な課題がある。加えて、地域医療の質の向上や標準化をどのように推進していくのか、といった課題もある。こういった状況の中で、地域医療関係団体及び地方自治体から現地研修会の申請が提出され、当研修委員会において審査し、採択させていただいた研修会のテーマは、概ね次の5つに大別される。(1)生活習慣病をテーマにした住民研修(2)自らの健康に関心を高めるための住民研修(3) 保健・医療・福祉関係者が事業活動の推進に必要となる技術及び情報に関する研修(4) 地域医療に携わる医師・保健師・看護師及び医療技術者などに最新の医学知識や技術の提供を行うための研修(5) 地域挙げて取組む地域医療の充実、そして健康なまちづくりに向けた研修最近は、全国で住民・行政関係者・医療関係者の協働によって取組む地域医療の再生やそれを通して取組むまちづくりが注目されていることもあり、上記の(5)をテーマとした研修会も増えてきた。2002年度(平成14年度)から、テレビ電話会議システムを利用した現地研修会が新たに加わった。この研修会は、複数の地域(2ないし3地域)をテレビ電話会議システムで結び、映像を通して相互に意見を交換し話し合うことによって、より良い地域医療づくりを、さらには地域づくりを考えることを目的に、毎年1回開いてきた。大型スクリーンに映し出された相手側の参加者の表情を見ながら進められた議論は、臨場感を深め、一体感を醸し出した。その中で、自らの地域の良さや課題に気付くとともに、相手方の取組を通して、その課題に対する改善策のヒントをつかむ様子も伝わってきた。同研修会では、住民・行政関係者・医療関係者が一同に会し、一緒に話し合うことにより、地域に協働の“わ”が広がっていった。このテレビ電話会議現地研修会は、2002年(平成14年)に開催された当財団の創立30周年記念研修会「地域包括ケアとまちづくり」に始まり、「痴呆ケアのための地域づくり」、「離島医療に必要なスキル」へと受け継がれていった。その後は、地域挙げての地域医療づくり(「私たちのこれからの地域医療づくり」、「保健、医療を通した私たちのこれからの地域づくり」、「信頼と絆が育む地域づくり」、「住民が協働で支える地域医療」)をテーマに、6回開催された。フォローアップ研修会が行われた地域もあった。そこで、地域における様々な取組が発表された。発表者の1人に中学生がいた。総合学習で、「地域医療の充実」をテーマに取組んでいた。後日、総合学習発表会に招かれ、出席した。「○○町医療拡大プロジェクト」というテーマでの発表であった。胸に響くとても素晴らしい内容であった。同時に、その地に地域力が育まれている様子をしっかりと感じることができた。現地研修会は、様々な目的で多くの方々に利用していただいた。少しでも地域医療の充実に、そして地域力の醸成に役立つことができたならば幸いである。これまでの研修の成果について評価を行うとともに、今後、一層の充実を図っていきたい。115研修委員会・現地研修会担当委員 梶 井 英 治現地研修会

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