3地域社会振興財団創立40周年にあたり、お祝いを申し上げます。地域社会振興財団の前身「財団法人へき地振興財団」は、地域のかかえる様々な問題を総合的に研究することを目的として、自治医科大学が創設された1972年(昭和47年)の12月に設立されました。その後、1989年(平成元年)に、地域社会の高齢化に対する政策課題を支援する事業に取り組むことになり、「地域社会振興財団」と改称されました。文字通り本財団は、地域医療人材の育成をめざす自治医科大学とともに歩んできたということができます。本財団の事業は多岐にわたります。自治医科大学と密接な連携のもとに行う各種研修会(中央研修会と現地研修会、年間各15回程度)の開催、地域社会健康科学研究所における調査・研究事業、およびこれに必要な建物や研究機器の整備、地域医療等振興事業費交付金交付事業など、いずれもわが国の地域医療と地域社会の振興に欠かすことのできない活動です。なかでも自治医科大学における教育研究と密接な関係があるのが、地域社会健康科学研究所への支援です。地域社会健康科学研究所は1973年(昭和48年)4月に設立された「へき地生態科学研究所」を前身とします。地域住民の疾病の特異性や病態生理を明らかにし、有効な対策について研究することを目的とする研究所で、1989年(平成元年)5月には同研究所大宮支所も設立されました。構成は環境医学研究部門、血液医学研究部門、病態生理研究部門、情報システム研究部門の4部門で発足しましたが、その後、保健・医療・福祉を統合した新たな施策に対するニーズに応え、併せて全国各地の地域医療の現場に対する支援を強化するため、1998年(平成10年)4月に保健科学研究部門、健康福祉計画研究部門の2部門を加え、「地域社会健康科学研究所」と改称しました。研究テーマは遺伝子、分子、細胞、個体のレベルにおける病態研究から、集団、地域における疾病や医療の状況、さらに地域社会固有の問題にまで及びます。すでに財団によって支援されてきた研究部門からは、世界に轟く画期的な成果も生まれています。しかしながら、医学研究は病気のメカニズムを解明するだけでなく、社会の中で病気に関連する課題を抽出し、予防、診断、治療法の有効性を検証する必要があります。これを遂行するには医師だけでは困難であり、地元の住民、行政、医師会、他職種の方々と連携して仕事を進めなければなりません。自治医科大学は地域医療のリーダーを育成して参りましたが、これからは地域社会のリーダーの育成をより心がけることが求められております。こうした社会状況の変化を考えると、地域社会振興財団の担う役割はますます大きく、本財団のさらなる発展を願う次第です。地域社会健康科学研究所所長 永 井 良 三(自治医科大学学長)財団創立四十周年にあたって
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