創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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創立30周年記念誌を開くと、地域医療学センターの梶井教授が研修事業の今後に向けて「我が国の地域医療の現状をみると、地域医療への期待感が膨らみ、さらに地域包括ケアシステムづくりが大きな潮流となってきている。また、地域住民が、自らの健康について十分に考え、主体的に取り組んでいくことが迫られている。」と記載され、こうした動きに対する研修の重要性を指摘されています。そこで郡上市においても地域医療はどうあるべきか?ということを市民とともに考える研修会を地域社会振興財団のご支援を頂いて実施させていただきました。この10年間は、合併と、特に医師を中心とした医療者不足という地域医療、特にへき地医療にとって大きな影響が生じる出来事に直面し、その対応が求められてきました。合併は、財政、広大市域・低人口密度、平均化の困難性といった課題を地域やへき地医療にもたらし、医師不足は、へき地医療の優先性の低下、へき地医療の専門性の軽視の明確化をもたらし、こうした結果、量的にも質的にもへき地医療は縮小の方向に考えられがちとなりました。一方、システムとして地域医療、特にへき地医療を支える方向への転換や、医療供給側の考えだけではなく、住民とともにへき地医療を考える方向への転換、更には地域で医師をはじめ医療従事者を育てる方向への転換を考慮する良い機会になったとも言えます。当市では、合併2年後の2006年(平成18年)に財団のご支援をいただいて新潟県聖籠町と当市和良町をテレビ会議システムでつなぎ、お互いの地域の保健医療福祉の現状を共有し、情報交換を行いました。この会議を通じて、改めて地域の健康づくり、それを通じての地域づくりの重要性を認識するとともに、合併してもへき地はへき地ではあるものの、人が住む以上安心安全な地域のために医療は不可欠、地域医療をみんなで考え地域の医療資源をうまくつなぎ合わせることにも住民が一役担う必要があるという機運が住民の方々にも生まれたようです。こうした社会的背景や、和良町で行った研修会もあって、郡上市においても医師不足の影響はないとは言えず、多くの課題に直面している地域医療を医療供給側の努力だけではなく、住民、行政、関係機関などそれぞれの立場での認識を共有化し、それにもとづく建設的議論が必要でそうした会を開催しようと当時の自治会連合会会長が呼び掛けられました。こうして、2007年(平成19年)より3年間にわたって地域社会振興財団の共催の下、郡上市自治会連合会と郡上市連合女性の会(いわゆる婦人会)が主催し、自治医科大学、郡上市医師会、郡上市が後援となって「郡上の地域医療を考える市民フォーラム」を開催しました。第1回は講演とシンポジウムを行い、日本や郡上の地域医療の現状を共有し、第2回は、ひざを交えたグループワークと講評を行い、今後の取り組みを検討し、第3回は講演とグル―プワークを行って、先進事例を学び自分たち自身ができることを検討しました。特にグループワークは様々な立場の人によりグループを構成するとともに、小グループの司会進行も主催者団体のメンバーつまり市民自らが行いました。こうしたフォーラムを通じ、双方向性の情報共有やコミュニケーションの充実、そうした機会の設定の重要性が認識され提案され、その後いくつかの活動が始まっています。このように当市で行った現地研修会は、医療従事者や行政関係者の研修ではなく、前回の記念誌上で提言されたように、住民が自らの健康、地域医療を考えるために地域住民を巻き込んだ研修会であり、非常に有意義なものであったと思います。地域社会振興財団の様々なご支援に感謝するとともに、今後とも、我々自身が住民や行政とともに地域住民が健やかに暮らすことができる地域社会づくりにより一層努力していかなければと考えます。財団の様々なご支援は我々へき地医療を続ける者にとって極めて重要であり、今後もいろいろな面でご支援ご指導いただくとともに、財団のますますの発展を祈念したいと思います。132郡上市地域医療センター長 後 藤 忠 雄当市での現地研修会 TV会議から地域医療フォーラムへ

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