健康福祉プランナー養成塾(以下、養成塾)の開始以来14年間にわたり、毎年、講師として関わらせていただき、現在は、運営委員の一員に加えていただいている者として、この養成塾の歴史を振り返り、その意義とこれからを考えてみたい。(養成塾の草創期)私が養成塾との関わりを得たのは、広島県の地域医療係長として、のちに事実上の全国標準となった広島県救急医療情報ネットワークや、へき地医療支援の各種情報システムなどの立ち上げに関わったことが契機である。その実績から、1998年(平成10年)秋に開催された地域社会振興財団主催の紀伊半島地域医療フォーラムでの発表の機会をいただいた。実際に役に立つ情報システムの構築に最も必要なのは、地域の関係団体の理解と連携であると力説していたのを、養成塾の生みの親である自治医科大学の坂本敦司教授にお聞きいただき、当時先生が構想されていた養成塾の講師として参加させていただくことになった。(地域医療の連携とコーディネーター)私自身、全国初のインターネット利用の救急医療情報ネットワークの立ち上げなどの経験から、新たな変化を生み出すために最も大切なことは、情報システム技術の議論などではなく、地域の課題に対する関係団体による問題意識の共有と行動のコンセンサス形成であり、それを生み出すコーディネーターの存在であると痛感していた。特に、医療分野は、医師をはじめとした専門家の集まりであることから、それらの専門家が社会課題の解決のために力を合わせるためには、社会システムづくりの手順を示しめざすものを実現していくプロセスを支援する者の存在が重要である。いわば、専門家を生かす専門職とでも言えよう。医師が常に医療のことを考え研鑽している専門家であるように、常に社会の将来像を考え、社会課題を解決するための社会システムづくりと、専門家の力が最大限の生かされる環境づくりに取り組む存在が求められている。(現場の課題を組織の課題にそして社会の課題に)医療の現場が医療施設の中から地域に広がる中で、医療関係者だけでは解決できない課題が増えている。現場の課題が現場だけでは解決できず、関係団体が連携して解決していくことが求められており、介護保険制度のように社会システムとして解決していく課題もある。また、個々の組織だけでは解決できなかったことが、組織的な取組みの仕組みを生み出すことで、解決できることもある。つまり、多様な人や組織の力を結びつけることにより、個々の力よりも大きな成果を実現し、継続的に発展させることが求められており、そのような役割が担える人材の育成が切実な課題となっている。(養成塾の意義)これが、14年前に始まった養成塾のめざしたものであり、今日その必要性はますます高まっている。医療分野における施設から地域への動きはさらに加速され、保健・医療・福祉の連携も重要になっているにもかかわらず、地域での連携を担う人材の育成が、組織的・体系的に進んでいるとは言い難い。その期待される役割とそのために求められる能力を明らかにする現場実践事例の研究・検証も十分に進んでいるとは言えず、人材育成のあり方自体が問われている。そのような中で、養成塾の14年の知見は、極めて重要なものである。全国から集まった現場実践者が、共に学び共に議論してきた。毎年の取組の経験163広島県地域政策局国際部長 橋 本 康 男健康福祉プランナー養成塾と14年
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