から、研修の内容も進め方も改善を続けてきている。その蓄積は、今後の地域医療の連携を進める人材育成に活かされるべき財産である。(現場研究、人材育成、現場支援)養成塾の14年の経験から、現場研究、人材育成、現場支援を、一つのサイクルとして取り組んでいくことの必要性が明らかになっている。すなわち、①現場での連携の事例を成功事例、失敗事例を含めて実践者の視点から調査し蓄積・発信して関係者と共有すること、②その知見を連携人材の育成に活かすとともに大学等での基礎教育にも反映させること、そして、③研修を受けた人材が現場に戻って実践に取り組む際に、アドバイザーの派遣やモデル事業の支援などを行うことである。これらのサイクルを繰り返していくことにより、地域医療の連携を担う人材の育成がスパイラル的に発展していくものと期待される。(養成塾のこれから)養成塾が、今すぐにこのような期待に応えられる訳ではなにしても、これまでの経験の蓄積を生かして、さらにその取組みを発展させていくことが期待されている。これまでに養成塾を受講した人々のネットワークは、貴重な財産である。養成塾では、これまでも過去の受講者を対象としたフォローアップ研修を3年に一度開催しているが、それに参加してくる人材は、地域において中核的な役割を果たしている人材であり、多様な経験と多くの知見を有している。養成塾が蓄積してきたそのような人材の全国的なネットワークも生かしながら、今後、養成塾の受講対象者や内容を拡大し、発展させていくことが求められている。(地域社会振興財団への期待)この養成塾を長年にわたって主催し続けている地域社会振興財団には、大きな敬意を表したい。14年前には、地域医療の連携は現在のような大きな社会課題としては意識されていなかった。その時期に、日本で唯一ともいえるこのような養成塾を立ち上げ、それを継続してきた見識は、時代の先を読むものとして高く評価されるべきである。地域社会振興財団が有している資源と能力を考えれば、先ほど述べた、地域医療連携の「現場研究、人材育成、現場支援」のサイクルをトータルとして支援していくことは、地域社会振興財団でなければできないプロジェクトではないかと考える。日本の地域医療の明日を切り拓くために、その役割を担っていただけることを期待している。(自治医科大学への期待)自治医科大学には、今日では、へき地で勤務する医師を養成するという以上の役割が期待されている。卒業生の多くがへき地等の地域の診療所で勤務するという自治医科大学は、まさに地域医療を中心領域とした唯一の医科大学である。この点で、近年の地方大学の「ふるさと枠」出身者にとっても、自治医科大学に期待される役割は大きいのではなかろうか。地域医療の連携という大きな課題に総合的・体系的に取り組むことが自治医科大学に期待されている。養成塾の14年の蓄積が、自治医大の新たな発展に生かされることを願っている。(終わりに)養成塾の草創期から今日まで一貫して関わってこれた者としての思いを述べさせていただいた。時代が養成塾創塾の理念に追い付いてきた今、養成塾が時代に取り残されることなく、さらに時代を切り開く役割を果たすための新たな発展が求められている。164
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