創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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深刻化する医師不足等の地域医療に関する現状及び課題について、住民・行政・医療機関等が認識を共有し、自らの地域のあり得るべき地域医療について主体的かつ建設的に考えることを目的として、「地域医療を考える県民フォーラム」を企画した。その企画は地域社会振興財団が行い、その趣旨に賛同し、フォーラムの開催を希望する都道府県と共同で開催してきた。このフォーラムは、相互参加型とすることを基本コンセプトとし、基調講演、パネルディスカッションの他に、住民が参加し、具体的な意見交換を行う場として、比較的少人数の分科会を設けた。第1回のフォーラムは、2006年(平成18年)11月19日に青森県で開かれた。当時、青森県では、知事の音頭のもと、あおもり地域医療・医師支援機構の設立や医師確保のためのグランドデザインの策定等、県挙げての地域医療づくりを強力に推進していた。さらに、住民主導型の地域医療研究会を立ち上げ、住民ニーズの把握とともに、地域医療づくりに向けた住民への啓発にも着手したところであった。このような中で、住民・行政・医療関係者が県民フォーラムに集い、皆が立場や職域を越えて熱心な議論が交わされた。地域医療研究会は、2次医療圏内の住民により組織され、地域の医療状況を自分たちの手で調査し、その結果を住民に伝え、ともに考えていくことを目的としていた。午後の4つの医療圏に分かれての分科会には、各地の地域医療研究会の方々の発表もあり、参加者を巻き込んだ参加型の議論となり、大いに盛り上がった。地域医療づくりを進める上で、ハードやシステム面の充実も大切であるが、「医療は皆で育み、つくりあげていくもの。しかも、皆の限りある共有財産である。」という意識づくりが極めて重要であることを、フォーラム参加者が共有し、第1回のフォーラムは終了した。第2回のフォーラムは、2007年(平成19年)12月15日に徳島県にて、第3回は2008年(平成20年)11月24日に鳥取県、第4回は2009年(平成21年)1月25日に栃木県、第5回は2009年(平成21年)9月23日に三重県、そして第6回が2011年(平成23年)2月6日に奈良県で開催された。各県では、分科会のテーマとして喫緊の課題が取上げられ、活発な意見交換が行われた。毎回、フォーラムを通して、住民・行政・医療関係者が一丸となって進める地域医療づくりへの第一歩が印されたような感慨の中で幕が閉じられた。なお、フォーラム参加者の地域医療に対する意識を検討するために、フォーラムの開始前と終了時にアンケート調査を実施した。いずれの県においても、参加者の地域医療への意識の変容に対して短期的効果が認められた。フォーラム終了後、地域との連携を深め、地域医療を守り育てる地域の住民・行政・医療機関の輪を築いていった県もあった。また、「地域医療を考える県民フォーラム」の長期的影響について検討するため、2011年(平成23)年7月30日にフォローアップを目的として、「地域医療を考える県民フォーラムinあおもり」が開催された。その際に実施した参加者へのアンケート調査結果を見ると、第1回県民フォーラムに参加した者の中に、フォーラムにより地域医療を守る意識が生まれたという記述が見られた。この結果は、当時の啓発活動が意識に影響した表れだと考えられた。県民フォーラムが始まった6年前から現在までを振り返ると、地域における地域医療への取組が大きく変わってきた。地域挙げて、都道府県挙げて、そして住民・行政・医療関係者の立場を越えて、地域の医療を守り育てようという活動が全国のあちこちで見られるようになった。その取組は、協働へと発展していった。県民フォーラムを通して、変わりゆく時代の目撃者になることができた。次のステップへ向けて、当財団が果たすべき役割は大きい。167地域医療を考える県民フォーラム実行委員会座長 梶 井 英 治地域医療を考える県民フォーラム

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