全国で医師不足が深刻化し、地域医療崩壊といった言葉が聞かれるようになった中で、自分たちが暮らしている地域の医療を支えていきたいと全国のあちこちで住民活動が見られるようになった。こういった住民活動に携わっている人たちの中から、活動を進める上でお互いが抱えている課題を共有し、協力して解決策を見出す場が欲しいといった声が聞かれるようになった。本財団は、こういった声を受け止め、2009(平成21)年7月4日と5日の2日間、東京の秋葉原コンベンションホールにおいて第1回目の標記シンポジウム『地域医療を守り・育てる住民活動全国シンポジウム2009』を開催した。この第1回目から、実行委員会の座長として関わらせていただいていた。シンポジウムの目的は、参加された皆様の活動を紹介していただき、様々な住民活動があることを知るとともに、今後の活動に役立てていただくことにあった。第1回目のシンポジウムには、『守ろうみんなの医療! 広げようみんなの“わ”!』のテーマのもとに、北海道から九州まで、全国から101名の方々が参加された。そして、2日間にわたって非常に活発な意見交換が行われた。初日には、「なぜ住民活動が必要なのか」と題する基調講演に続いて、先進的に取組んできた団体からの事例報告が行われ、その後のグループワークへと引き継がれた。グループワークでは、各々の活動と問題点や課題が共有され、議論が重ねられ、一人ひとりが今後へ向けた活動目標を取りまとめ、持ち帰られた。この■か2日間の間に、幾重もの人と人との“わ”が築かれ、それが一つの“わ”へと綯われ、全国のネットワークが築かれた。参加者の目の輝きの中に、大いなるパワーとともに、その光が地域医療に注がれている様子をしっかりと感じることができた。一つの新たな流れが生まれたように思われた。シンポジウムの報告書は、事例報告者への質問と回答、ならびに参加者の活動の現状と今後の取組の記述を中心に作成された。同報告書は、地域医療を守り・育てる住民活動に関するノウハウが鏤められており、テキスト的存在になっている。第2回目のシンポジウムは、『育てようみんなの医療! つなげようみんなの“わ”!』をテーマに、2010年(平成22年)7月に東京の都道府県会館で開催した。住民活動と行政の協働を中心テーマに、2日間熱い議論が交わされた。第3回シンポジウムは、『創ろうみんなの医療! 深めようみんなの“わ”!』をテーマに、2011年(平成23年)6月に栃木県の自治医科大学で開催した。医療者を支える住民活動を中心テーマに、議論が大いに盛り上がった。回を重ねるごとに、住民に加え、行政、医療関係の参加者が増えてきたことは特筆に値する。第3回シンポジウムの最後に、第1回地方シンポジウム開催地の投票が行われ、宮崎県延岡市に決定した。同地方シンポジウムは、2011年(平成23年)11月に開催された。シンポジウムでは、宮崎県における小林市や延岡市の取組を中心に、地域社会と地域医療の抱える課題を掘り下げ、その中から自分たちの地域で出来ることを探し出し、持ち帰ることを目的として、より具体的な議論が展開された。3回の全国シンポジウムと1回の地方シンポジウムの企画、運営に携わり、住民、行政、医療関係者の協働の“わ”が確実に拡がっていることを深く実感した。シンポジウムの参加者一人ひとりの意識が繋がり、共鳴し合い、明日からのエネルギーが生み出されていく様子もしっかりと感じ取ることができた。そのエネルギーは、地域の医療を、そして地域そのものを変えていく力を秘めている。こういった活動の展開を見守り、エールを送り続けたい。この流れは、2012年(平成24年)12月の第4回シンポジウム『集めようみんなの“ちえ” 活かそうみんなの“わ”!』へと引き継がれる。177地域医療を守り・育てる住民活動全国シンポジウム実行委員会座長 梶 井 英 治 地域医療を守り・育てる住民活動全国シンポジウム
元のページ ../index.html#187