9地域社会振興財団が創立40周年を迎えられ、これまでの地域医療への多大なるご貢献に敬意を表するとともに、多くの業績を残され益々発展を続けておられることを心からお祝いいたします。本財団は、へき地医療の確保および地域住民の福祉の増進を目的とする自治医科大学の研究および地域活動を支援、補完するものとして、大学と密接に連携して活動を続けておられ、その組織の1つに地域社会健康科学研究所を擁しています。私は、自治医科大学附属大宮医療センター(現さいたま医療センター)の開設と同時に同センターの教員として赴任しましたが、大宮にもこの研究所の大宮支所が置かれ、私達の研究および地域医療の実践を大いに助けていただきました。本財団の活動は多岐にわたっていますが、調査研究事業として支援いただいた、僻地と都市部での食事の比較実態調査は思い出深いものの1つです。予想に反して(といっては失礼になるのかもしれませんが)、山間僻地の高齢者の食事が、都市の壮年者と同等あるいはそれ以上に高カロリー、高脂肪であり、現代の食品流通機構の発達に驚いたものでした。この時に共同研究として調査に協力いただいた一人の保健婦さんからは、20年近く経った今でも、秋には貴重な山の恵みを送っていただいているという余禄も残っています。もう1つ、忘れられない経験は、長寿社会づくりソフト事業費交付金交付事業の健康福祉プランナー養成塾に参加させていただいたことです。平成11年より、地域での健康福祉施策に携わる地方行政機関の職員の方々を「明るく、健康的に安心して暮らせる社会」づくりのエキスパートに育てようと言う、坂本敦司助教授(現法医学教授)、石井朝子医療福祉相談室長を中心にすすめられた企画のお手伝いをさせていただき、地方の健康問題に多少なりとも直接肌に触れられたことは、それまで、研究室から医療を見ていた私にとっては貴重な経験となりました。私の赴任当時の大宮医療センターの研究としては、心臓血管系の生理機能に関する臨床研究が中心で、研究設備もトレッドミルなどの検査機器がほとんどで、基礎的実験のできる設備は全くありませんでした。その後、本財団の地域社会健康科学研究所の支所としても私達の生化学的な実験研究にもご支援いただけるようになり、大学の経費の範囲を超える機器の整備にもご援助いただき、私が定年で退職した本年3月には医科大学の第二病院としてはかなり充実した研究室が整備され、私費を投じて始めざるを得なかった24年前を思うに感慨深いものがあります。この間の財団の一方ならぬご支援に深く感謝する次第です。このように、さいたま医療センターが単なる病院としてだけでなく、大学の施設として、研究や研修を介しても地域医療の向上に貢献していくためには、本財団の更なるご支援が必要です。今後の益々のご発展を切にお祈りいたします。前地域社会健康科学研究所さいたま支所長 川 上 正 舒(自治医科大学名誉教授・ 公益社団法人地域医療振興協会 練馬光が丘病院長)地域社会振興財団創立40周年を祝して
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