創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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地域医療を推進する自治医科大学であるが、学生教育やレジデント教育などに使用する教科書がない、というのが長年の懸案事項であった。このような状況の中で医学教育モデル・コア・カリキュラムが改訂され、「地域医療」が新たに導入されることになった。目標として「地域医療の在り方と現状および課題を理解し、地域医療に貢献するための能力を身に付ける」ということが掲げられた。これを契機に大学を挙げて地域医療学の学問体系をまとめ、教育にも使用できる教科書を作成する、ということで、2007年(平成19年)ごろから準備が始まった。監修を自治医科大学とし、まずは編集委員会を設置した。編集委員長は自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門の梶井英治教授とし、学内外から10人の編集委員を選出した。編集委員会の事務は地域社会振興財団が務めることになり、財団の事務局長と事務局次長(当時)も編集委員として参画した。最初の1年ぐらいは月1回のペースで編集委員会を開催し、項目(目次)の作成と各項目ごとの適切な執筆者の選考(21人)を行った。2008年(平成20年)には出版を医学書院にお願いすることとし、医学書院より各執筆者に執筆依頼を行って頂いた。2009年(平成21年)の新学期には間に合わせる、というかなり厳しいスケジュールの中で、各執筆者は締切に遅れることなく、同年3月に刊行することができた。目次を以下に記す。Ⅰ 地域医療学総論1.医療の現状と地域医療 2.地域医療の歴史と医師の偏在 3.地域社会と地域医療 4.地域医療の概念と地域医療学 5.地域医療の現状分析Ⅱ 地域医療システム論6.システムとしての地域医療 7.地域医療システムを構成する人的要素 8.医療機関 9.回ごと保健 10.自治体(都道府県、市町村) 11.PO 12.外来診療 13.入院医療 14.在宅医療 15.保健活動と健康増進 16.福祉活動 17.都道府県の事例(島根県) 18.市町村の事例Part1(島根県隠岐郡西ノ島町ほか) 19.市町村の事例Part2(岩手県東磐井郡藤沢町)Ⅲ 地域医療を支える人材20.医師 21.看護職 22.コ・メディカル 23.持続可能な地域医療機関(中小病院、診療所)の経営Ⅳ 人々のライフサイクルに関わる地域医療24.有る家族に関わった経験からこれらの内容の前に「巻頭」として「ある地域医師の1日」として、写真入り(モデルは自治医科大学12期生の中村伸一先生)で地域で活躍する総合医の1日の仕事が紹介されている。いずれにしても、わが国初の地域医療学の教科書として、関係者に1度は手にとって頂きたい書籍である。医学書院(東京) 2009年 ISBN:978-4-260-00805-1定価(本体3800円+消費税)187自治医科大学地域医療学センター・公衆衛生学部門 中 村 好 一 「地域医療テキスト」について

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