地域社会振興財団におかれては創立40周年を迎えられ、心からお慶び申し上げる。さて、2009年(平成21年)3月に自治医科大学監修による「地域医療テキスト」が刊行された。私は貴財団の事務局長、事務局次長とともに、このテキストの編集に携わらせていただいた。このテキストの刊行については、医学教育モデル・コア・カリキュラムが改定され、新たに「地域医療」が導入されることが1つの契機となっている。島根県においても、島根大学医学部での地域医療教育は充実しつつある。今回は、島根県における地域医療を担う医師の育成などについて紹介する。島根大学医学部においては2006年(平成18年)に、県内の過疎地域で生まれ育ち、将来その地域の医療に貢献する強い意志のある者への「地域枠」推薦入試が開始され、同時に学士入試制度の中にも「島根県枠」が置かれた。以後推薦入試制度の中に「緊急医師確保対策枠」が、一般選抜入試制度の中に「県内定着枠」が設置された。現在ではこれらの入学枠(以下「しまね枠」という)で一学年25人の新たな学生が誕生する。また、島根県では医学生に対して奨学金制度を2002年(平成14年)に創設し、その後島根大学「地域枠」推薦入学者などを対象とした奨学金制度を設けた。これは一定期間、県内の医療機関で勤務すると奨学金が返還免除となるものである。2012年(平成24年)8月現在で、187人の医学生に貸与している。このうち43人がすでに医師となっており、来年度以降についても毎年度20〜30人前後の者が新たに医師となる見込みである。「しまね枠」入学者や奨学金の貸与を受けた医学生など地域医療を志す人材の育成などを目的として、2010年(平成22年)に島根県の寄附による「地域医療支援学講座」を島根大学医学部に開設した。「しまね枠」の医学生等に対して、定期的な面談や出身地域関係者との意見交換等を通じて継続的にコミュニケーションを図っている。また地域医療機関に勤務する医師を招いて体験談を聴く等の「地域医療セミナー」を定期的に開催するなど、地域医療への関心を高める取組みを実施している。さらに、春季・夏季には自治医科大学の医学生等と合同での地域医療実習を実施し、医学生同士が交流できる機会を提供し、地域医療に対する目的意識の醸成やモチベーションの維持を図っている。島根県では前述の医学生を対象とした奨学金制度に加えて、2010年(平成22年)から将来県内医療機関で勤務する意欲のある研修医等を対象とした研修支援資金制度も創設した。「しまね枠」入学者や奨学金、研修支援資金の貸与を受けた医師の累計は、2014年度(平成26年)には約160人、2018年度(平成30年)には約290人となる見込みである。今後増加する若手医師の県内定着に向けた取組みを強化する必要があり、2011年(平成23年)8月に島根大学、県内医療機関、医師会、行政等が参画して、「しまね地域医療支援センター」を設置した。本センターでは、若手医師が島根県に軸足を置きながら認定医や専門医等の資格が取得できるよう、キャリア形成を支援する。具体的には、本人の目標や希望について気軽に相談できる体制を構築し、県内医療機関の状況等を情報提供し、医師一人ひとりが10年程度のキャリアプログラムを作成する。2013年度(平成25年度)中には、島根大学医学部内に「しまね地域医療支援センター」や島根大学の関係部門などが入る建物が整備される予定である。こういった取組みを通して関係者の連携体制をさらに強化し、若手医師がキャリアアップ・スキルアップできる体制を整備し、島根県の地域医療が充実していくよう一層努める所存である。188島根県健康福祉部医療統括監 木村清志島根県における地域医療を担う医師の育成
元のページ ../index.html#198