1998年(平成10年)に高久史麿 前自治医科大学学長が、地域医療白書の構想を披露された。それを受けて、自治医科大学と当財団とが共同で発刊することになった。同白書は、へき地における医療機関の現状および保健・医療・福祉の連携に関する全国調査を行い、地域医療・健康施策のあるべき姿をとらえて、資料の提供や提言を行うことを目的とした。2002年(平成14年)3月に地域医療白書の第1号(「へき地医療の現状と課題」)を刊行し、2007年(平成19年)3月に第2号(「これからの地域医療の流れ」)を、2012年(平成24年)3月に第3号(「安心して暮らせる医療づくり―現状と課題を踏まえて」)を刊行した。第1号から第3号の編集委員会委員長を梶井が務めさせていただいた。多くの編集委員、編集協力者、事務局の皆様の尽力のお陰で3冊の白書を刊行することができた。ここに改めて感謝の意を表したい。少子高齢化による人口構造の変化や急性疾患から慢性疾患へという疾病構造の変化に伴い、医療に対するニーズの多様化とその対応がせまられる中で、地域医療白書第1号を刊行した。この第1号では、へき地医療が抱えている問題点、課題を抽出し、講ずべき対策の方向性について検討した。市町村区分別にみた地域医療の現状、公的医療機関の整備状況、へき地医療を担う医師の現状や地域医療の先進事例を調査・分析した。その上で、地域医療の発展に向けた対策を提示した。対策は、地域包括ケアへ向けての自治体の取組、へき地における医師確保、医師の育成、都道府県の役割の4点について行った。地域医療白書第2号では、「この数年の医療制度等の動向」で現状を総括した後に、へき地に焦点を当て、住民が求める地域医療、地域医療の現状、地域医療を支援するシステム、地域医療を担う人材に関する分析とまとめを行った。その上で、地域医療の充実に向けた提言を行った。提言は、次の7 項目からなっていた。①地域医療に対する意識変革の推進、②都道府県を挙げての地域医療体制づくりの推進、③保健・医療・福祉の包括化・一体化と多職種連携の推進、④総合医の育成・定着化の推進、⑤医療機関の役割分担と連携推進、⑥地域医療支援体制の確立、⑦大学の地域医療における役割の明確化、である。地域医療白書の第2号から第3号までの5年間を振り返ると、第2号で提言に取上げた7項目はいずれも進展がみられた。とりわけ、住民・行政職員・医療関係者の協働や地域医療を守り育てる住民活動が全国に広がった。さらに、総合医の在り方に関する検討も、まさに今、国レベルで取組まれている。各地の大学において、地域医療教育が必修化され、地域医療学関連講座の開設も相次いでいる。地域医療白書第3号は、地域医療の実践を経験した自治医科大学地域医療学センターの教員が編集委員となり、「安心して暮らせる医療づくり」を理想像として掲げ、現状を整理し、課題を抽出した。類似した課題のグループ化を行い、課題ごとにチームを結成して、調査を実施した。このような課程を経て、地域医療の全体像、保健・医療・介護・福祉の連携、地域医療に関する情報発信と啓発活動、地域医療に関する問題解決の方法、地域医療データバンクの5項目について、それぞれ調査・分析結果及び提言を記載した。地域医療白書第3号を担当した事務局は、一人でも多くの方に本書を読んでいただきたいとの思いから、自治医科大学ホームページに電子化した白書のアップやダイジェスト版リーフレットの作成にも取組んだ。この第3号については、記載した提言のフォローアップを行い、評価することにしている。全国で地域医療白書が読まれ、参考にしていただければ幸いである。さい後に、地域医療白書の作成に際し、全国の地方自治体、医療機関、勤務医師、医療関係者、教育機関等の方々には一方ならないご協力をいただき、心から感謝申し上げたい。191地域医療白書編集委員会委員長 梶 井 英 治地域医療白書「へき地医療の現状と課題」
元のページ ../index.html#201