創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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「地域医療白書」第3号の発刊に参加した。我々の担当は、地域医療の重要課題の一つである「保健・医療・福祉の連携」に関する現状の把握と将来に向けての提言であった。地域医療の体験とは切っても切れない縁を持つ我々にとって、構想からはじまり、実地調査そしてその整理におよぶ過程は、自らが地域の一線で勤務していた頃と照らし合わせての作業となり、必然的に力が入った。また、調査のために地域に出かけた際に出会った、地域医療に邁進する「人」は、皆さん、熱くもあった。このたびの調査では、まず、「連携」の促進因子と阻害因子を、実例から探索した。地域で連携を担っているスタッフへの対面調査を行い、ʻ定期的な会合の開催ʻ、ʻ物理的にも心理的にも近い、連携資源間の距離ʻ、ʻ医師の考えや姿勢ʻ、ʻ過不足のない人的資源ʻといったキーワードが抽出された。これらが■っていれば、連携は実現し、活性化していた。同時に、地域住民に対するアンケート調査で、ʻ健康問題が発生した際に誰に相談するかʻという仮想質問を行い、地域ごとの相談先の異同を見出した。地域の連携の程度を反映するように、地域別の連携のキーパーソンがいくらか異なる様子も伺えた(詳しくは白書にアクセス下さい)。次いで、これらの調査を踏まえ、我々は、連携の成熟度にあわせて、ʻ連絡先が分かる程度の関係ʻ、次いでʻ顔見知りの関係ʻ、そしてʻ馴染みの関係ʻの三段階があると考えた。そして、健康を享受するには、馴染みの関係にある連携の実現が必要であろうとした。最後に、ʻ連携を理解して自らその連携に参加できる人材の育成ʻ、ʻ連携の契機を増やす仕組みʻ、さらにʻ人口規模に合わせた、連携に適切なエリアの設定ʻについて、考えをより深め、実践を蓄積することが重要ではないかと提言した。こうした多地域の調査に基づく知見や考察は、これまでに文献としてはなく、白書にこれを綴れたことは歴史的にも意義深いと振り返って思う。地域医療の現場にいると、他地域との比較を持たず(持てず)、個人の了見でものを決めてしまうことがある。全国的な(いや全世界的な)視野で、自らの地域医療について考えてみたい場面は常にある。しかし、そのためのリファレンスとしての書籍はまずない。こんな時、白書は役立ってくる。自分自身も前刊白書をずいぶん頼りにしてきたものである。今回の白書創りでは、地域医療に携わるすべての人が「共有」できることを表現しようと皆で努めた。地域医療の今、そしてこれからを見据える「たたき台」としての資料になれば幸いと願いつつ、皆で議論を重ねた(フィードバックを頂けますとなお幸いです)。御協力頂いた地域の皆様に、あらためて御礼を申し上げます。(地域医療白書第3号 p80.より)193自治医科大学臨床検査医学講座 小 谷 和 彦「地域医療白書」を担当して

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