創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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地域社会振興財団は、設立当初より、へき地・地域で抱える諸問題について、基礎的、臨床的、さらに総合的な調査研究事業を行ってきた。自治医科大学創設である1972年(昭和47年)12月に設立された「へき地振興財団」に、翌年4月に環境医学研究部門、血液医学研究部門の2部門からなる『へき地生態科学研究所』が新規に設置された。さらに1989年(平成元年)5月には同研究所大宮支所が設立され、1991年(平成3年)7月に病態生理研究部門、情報システム部の2部門並びに実験医学センターを加え、その後、地域社会における高齢化、少子化の急激な進行や介護保険制度の実施をはじめとする保健・医療・福祉を統合した新たな施策に対するニーズに対応するため、1998年(平成10年)4月に保健科学研究部門、健康福祉計画研究部門の2部門を加え、その名称を『地域社会健康科学研究所』に改めた。現在では、次の7部門と大宮支所の計8部門で、研究事業が行われている。1) 環境医学研究部門この部門では、癌、循環器疾患、生活習慣病に加え、疾患の環境因子の解明に関する研究を行っている。最近では、さらに地域の高齢化に伴う疾病構造、少子化の原因となる不妊症等、各種小児疾患と環境因子との関係に関する研究を行い、その成果を取りまとめ、地域社会に暮らす住民の疾病予防、健康指標を向上させるための研究をしている。これまで、行われてきた肝炎ウイルスなどの研究に加え、環境物質として重要なカドミウムに関する研究に着目し、さらに内分泌かく乱物質についての研究を行っている2) 血液医学研究部門この部門では、疾病の特性と遺伝要因の解明に関する研究を行っている。心血管病の発症に強く影響する生活習慣病は、環境要因とともに遺伝素因の関与もあるとされており、地域医療の現場でも食習慣等の環境因子のみを原因としては説明できない特異性を持つ地域が存在することから、ゲノム解析を行い、環境要因と遺伝素因との相互作用の解析を含めた生活習慣病発症の要因の解明を行ってきた。特に、生活習慣病関連の遺伝子として、特に内臓肥満に関する研究を行ってきた。また、糖尿病に関する遺伝疫学研究は、モンゴル、タイなどのアジア地域と共同して研究を行ってきた。3) 保健科学研究部門この部門では、保健・医療・福祉の統合化に関する研究を行っている。少子化、高齢化の顕著なへき地などの地域社会に暮らす住民が、健康な生活を送るためには、保健・医療・福祉を統合した新たなシステムが必要である。これらのニーズを疫学的に把握し、新たな施策提言のための自然、生活、社会の外的環境および心理、栄養など内的環境の評価方法の開発とこれらの方法で把握したニーズを用いた実際の施策提言の検討を行った。4) 健康福祉計画研究部門この部門は、さらに地域医療学研究室と地域医療政策研究室に分かれ活動している。   地域医療学研究室では、地域医療に関する総合的研究を対象としている。地域社会の特徴の一つとしてあげられる住民の高齢化は、医療にも大きな影響を与え、求められる医療内容も変化してきた。その研究として、JMSコホート研究を推進し、脳卒中、心筋■塞の罹患とリスクについて解析を行った。一方では、医療は公共財であるという側面もあり、医17地域社会健康科学研究所副所長 谷 口 信 行調査研究事業の展開

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