創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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師の偏在や患者負担の不公平は放置されるべき問題ではないことから、疾患領域ごとに医療資源の分布をみることにより、医師の偏在や患者負担の不平等について検証し、公共財としての医療の適正配置への提言を検討している。地域医療政策研究室では、地域特性を踏まえた保健・医療・福祉施策の企画・実施方法に関する調査研究を対象としている。地域社会の少子・高齢化や家族機能の変化により、地域における多職種連携にもとづく保健・福祉サービスの提供、地域包括ケアの重要性が高まっていていることから、地域包括ケアが十分に機能するための『地域住民のニーズ把握』、『ニーズ実現のための多職種連携』、『連携のコーディネート』についての調査・研究を行い、地域の人的資源がより有効に機能するための社会的条件を検討している。5) 病態生理研究部門この部門は、さらに臨床検査医学研究室と病理学研究室に分かれ活動している。臨床検査医学研究室では、病態検査、臨床生理等を用いた基礎的・臨床的研究を行っている。へき地等地域住民に多くみられる疾患として、脳・心臓などの血管疾患が重要視されている。特に、心筋■塞、脳出血、脳■塞などの動脈硬化症と関連が深い疾患の罹患率が問題となっていることから、加齢、動脈硬化を中心にしたこれらの疾患の診断および成因について検討するため、血液検査および生理機能検査を用いた研究を行っている。これまで、主体的に取り組まれてきた超音波を用いた研究を引き続き行うともに、血液検査、特に血清タンパク、脂質の研究を行っている。病理学研究室では、疾患の発生機序等に関する細胞病理学的研究を行っている。病理診断を目的として作製されたパラフィン包埋病理ブロックからRNAや蛋白を抽出し、解析が行えるようになれば、腫瘍の病理解析に大きく貢献できることから、癌関連遺伝子発現の定量化を試みる。さらに、遺伝子発現変化や遺伝子変異、染色体異常の検出を行うことにより、遺伝子変異については、腫瘍との因果関係を明らかにするとともに、染色体異常であれば、腫瘍診断への応用を図る研究を継続している。さらに、腫瘍モデルの作成、乳癌・卵巣がんなどに関する新たなマーカーの研究などについて研究を行っている。6) 情報システム研究部門この部門では、包括医療情報システムの開発に関する研究を行っている。地域医療の水準を向上させるためには、医療情報伝達システムの応用が必須であることから、次世代通信規格の地域医療への応用および地域医療の情報共有に必要とされるセキュリティの程度について実用的な手順を検討している。7) 実験医学センターこの部門では、疾患モデル動物の作成・維持・管理・評価のサポートシステムの研究を行っている。少子・高齢化が特に顕著な地域社会に暮らす住民の疾病の特異性、病態生理、その原因を明らかにするとともに、それに対する有効な対策について研究することが重要であることから、これらの基礎研究、特に動物を用いた疾患モデル動物の作成、維持・管理、評価等をサポートする基盤システムの構築を目標とした研究を実施している。実験医学センターは、小動物とそれより大きな動物を対象とした実験を担当している。これにより、遺伝子組み換えによる研究が飛躍的に進歩し、多くの疾患に関する研究を行うことができた。また、バイオイメージングの研究も進められている。なお最近では、動物福祉に関する考え方、法律による規制により、一層の社会的責任が求められており、それに率先して対応している。8) 地域社会健康科学研究所さいたま支所この部門は、自治医科大学さいたま医療センター内に設置されている。さいたま医療センター内に分室を設けることで、多くの研究者の研究の場を提供することが可能となり、研究の円滑な推進に役立っている。18

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