創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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 中 村 好 一30周年記念誌と同様、最近の10年間も基本路線は変化がない公衆衛生学研究室である。2代目の柳川洋名誉教授は埼玉県立大学の学長を4年間務められた後、公益社団法人地域医療振興協会の顧問として大所高所から我が国の公衆衛生をリードされている(なお、2011年(平成23年)4月に同大学の副学長に自治医科大学卒業の萱場一則先生[宮城2期]が就任された)。助教授であった尾島俊之(自治医大10期・愛知県)は浜松医科大学の健康社会医学講座に教授で転出し、後任は上原里程が准教授を務めている。なお、学校教育法の改正により「助教授」が消滅したが、これにより本研究室の助教授経験者はすべて教授(それも、公衆衛生学の本筋の)に就任したことになった。順に橋本勉名誉教授(和歌山医科大学公衆衛生学講座)、永井正規教授(埼玉医科大学公衆衛生学講座)、中村、それに尾島である。このほかに本講座出身者として藤田委由教授(島根大学医学部副医学部長、環境保健医学第Ⅰ講座)、坂田清美教授(自治医大4期・青森県、岩手医科大学医学部衛生学・公衆衛生学講座)、谷原真一准教授(福岡大学医学部衛生学講座)が活躍している。また、北京大学(中国)では研究室に外国人特別留学生として所属していた張拓紅が公衆衛生学部門の教授を務めている。さらに、本学の歴代の卒後指導部長(教授)は本講座の教授を兼務しているが、前任の尾身茂(自治医大1期・東京都)の前任は教室員の塚原太郎(自治医大7期・栃木県、厚生労働省大臣官房厚生科学課長)であった。研究は引き続き疫学を中心に行っている。川崎病の疫学をはじめ、難病の疫学、感染症の疫学、循環器疾患の疫学、自殺の疫学など、疫学の中でも比較的主流の分野から、マイナーな分野まで幅広く取り組んでいる。川崎病とプリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病[CJD]など)の疫学は、長期間取り組んでいることもあり、国内はもとより国際的にも他の研究者の追従を許さない地位にある。川崎病は1990年代半ばより患者数・罹患率が上昇し、2010年(平成22年)には罹患率が239.6/0~4歳人口10万/年と史上最高となった。第1回全国調査(1970年)からの累積患者数は25万人を超えたが、いまだに原因が不明で、そのために確定診断方法や根治療法もないのが現状である。しかしながら全国調査を中心とした記述疫学データは、(1)大きな季節変動(冬場に多発し、夏にもやや増加傾向がある)、(2)患者の年齢分布(0歳後半にピークを持つ一峰性の分布)、(3)同胞例の存在とそのリスク、などから感染症の関与が疑われているが、一方で、(a)人種差(日本人>アジア系>黒人>白人)、(b)親子例の存在(既往がある親だとリスクが高い)などの事実からホスト側の要因の関与も疑われている。今後とも引き続き研究を継続し、早期の原因究明と診断/治療法の確立が求められている。プリオン病については、昨年、我が国でウシ海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)が発生してから10年が経過した。この間、2005年(平成17年)には我が国第1号の変異型CJD病が明らかになり、疫学/公衆衛生学的対応に追われた。現在は内閣府食品安全委員会で米国からの輸入牛肉の月齢緩和(現状の20か月以下を30か月以下にまで引き上げること)の是非が検討されており、同専門委員会で疫学データを使用した化学的な根拠に基づく検討を行っているところである。現在、中村は国際疫学会理事、日本疫学会理事を、上原は日本疫学会刊行Journal of Epidemiology(日本疫学会刊行)の編集委員を務めている。今後とも国内外において本研究室の研究力を示し続けたいと思う。最後に、元学生部長の菊地浩名誉教授が2010年(平成22年)に逝去された。謹んでご冥福をお祈りする。26保健科学研究部門・公衆衛生学研究室

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