谷 口 信 行臨床検査医学研究室は、初代教授の河合忠先生のご指導の下開設され、その後の発展の基礎が築かれた。2代目の主任教授は、超音波検査を専門とされる伊東紘一先生であり、ご専門の超音波医学に関する研究が盛んに行われた。2000年(平成12年)に、それまでの「臨床病理学」から、形態病理学との区別を明確にするという全国的な流れに沿って、「臨床検査医学」へと名称が変更された。2006年(平成18年)度からは、谷口が引き継き、その後の研究室業務を担当している。本研究室は、大学設立からの目的である教育、研究、診療、地域医療貢献に役立つべく、努力してきており、特に地域医療を見据えた研究が行われてきた。検査領域、超音波検査領域での多くの研究、成果の発表を行ってきた。国際的には、1990年(平成2年)より1996年(平成8年)まで、大学中心に進められてきた北京医大(現北京大学医学部)との共同研究に参画し、肝臓病についての研究を行っていた。また、留学生を積極的に受け入れ、モンゴルからは、Uurtuya医師、Bayasgalan医師を、中国からは王怡医師を受け入れ、特にUurtuya医師と王医師は当大学で、学位を取得し帰国している。なお、王怡医師は、現在上海のFudan大学の超音波医学部門の教授として活躍している。これら海外との共同研究により日本の地域医療との対比・比較検討をしている。スタッフと研究テーマ:谷口信行:超音波による組織性状診断を主な研究テーマとし、臓器の硬さ、超音波減衰の計測をしてきた。それに加え、ドプラ法を利用した血流評価を行い、流量の計測を行っている。最近では、超音波医学会と連携し、検査者が検査を安全に行うための指針、長時間検査を行う場合の検査者の負担を減少させるための提言案を作成中である。山田俊幸:血清アミロイド蛋白A(SAA)とそれによって起こるAAアミロイドーシスの研究を基礎的観点、臨床的観点から行っている。基礎研究として、SAAの遺伝子多型とAAアミロイドーシスの罹患率や血清SAA濃度との関連について、臨床研究として、生検組織中のアミロイド蛋白定量の有用性を指摘し、そのアッセイに使うより特異的な反応性を持つ抗体を作製した。紺野啓:超音波照射によるメカニカルストレス負荷が細胞に与える影響の研究を行い、対象の培養細胞に生じる各種の影響を観察・評価できるオリジナルの実験装置を開発した。藤井康友:超音波干渉法を用いた音響インピーダンス計測法による皮膚疾患の新しい診断法の開発し、皮膚病変の凹凸および性状変化の客観的評価法になりえることを明らかにした。また、超音波照射が生体に及ぼす影響に関する研究として超音波照射が、脂肪細胞、血管内皮細胞および白血球の生理活性物質発現に与える影響について検討を行った。小谷和彦:酸化修飾リポ蛋白と血管病態の関係について、新規バイオマーカーを活用して調べている。新規指標の臨床検査や健康科学への適応を目指している。鯉淵晴美:超音波探触子が細菌を伝搬する可能性について研究している。これまで、アルコール消毒は、探触子を劣化させることが知られており、今後はアルコールに代わる、探触子を劣化させない消毒薬の開発を目指している。29病態生理研究部門・臨床検査医学研究室
元のページ ../index.html#39