浜 本 敏 郎 地域医療の水準を向上させるためには医療情報伝達システムの応用が必須であることから、次世代通信規格の地域医療への応用および地域医療の情報共有に必要とされるセキュリティの程度について実用的な手順を検討する目的で1991年(平成3年)に開設されました。この10年間の情報通信技術の進歩の変遷はめまぐるしいものがあり、またこの先もさらに変化していくと予想される。その中には利用者端末: Windowsが主要な位置を占め、Windowsに対応したサービスを提供すれば、減りつつあるマッキントッシュ(Mac)利用者を含め、ほぼ必要を満たせるようになると考えられていたが、予想に反してMac利用者が減らず、多機能携帯電話機やスマートフォンなど携帯端末の進歩、普及によって、これらへの対応が不可欠となってくるなど、利用者端末の多様性は減じることがなかった。これらを含め、一人で複数台の端末を利用することが普通となってきており、それに対応して有料、無料の個人向けのネット上のファイル格納サービスの利用が増加している。しかし、セキュリティの観点から、これら商用のファイル預かりサービスの安全性にはついては、なお検討が必要である。また動画配信時にも携帯端末への対応が考慮されるようになってきた。通信規格: インターネットの普及により、通信に使われる電話番号に相当するIPアドレスが枯渇し、現行のIPアドレス(IPv4)の新規割り当てが停止され、また2011年(平成23年)以降次世代通信規格に基づくIPv6アドレスの割り当てが一部プロバイダで可能となり、利用者がそれと気づかないうちにその使用が増えている。しかしながら、この新規格の利点を生かしたサービスは、セキュリティ上およびプライバシー上の制約から、まだ実験的段階である。IPv6通信でなければ受けられないサービスはこれから開始されると考えられる。暗号化: インターネットなどを利用して情報交換する際の秘匿性を高める目的で暗号化が使われるが利用者に手間をかけず、秘匿性を高め、かつ暗号■の紛失などによるデーター復号不能の事態を招かないような安全な暗号化を求め、様座な工夫がされているが、ほとんどの利用者が使えるような手軽な方法はまだ普及していない。暗号化して送信する場合は相手方にその暗号を解除する方法がなければならず、ごく密接に情報交換している相手でなければ、難しい。一つの解決は通信しようとする相手と同じメールソフトを使うことであるが、これも各人の好みと慣れの問題があるので多人数での利用はあまり現実的ではない。認証: アプリケーションレベルでの利用者認証はIDとパスワードによる認証が一般的であるが、利用者側も多くのシステムでのID、パスワードの管理の負担が重くなっている。このような問題を解決するため、シングルサインオンのシステムが提唱されているが(Shibboleth、OpenIDなど)対応するアプリケーションがまだ少なく、また大学間および企業との連携がある程度ないと、メリットを感じにくく、普及を阻んでいる。しかしながら、ほとんどのアプリケーションで認証部分をモジュール化する傾向にあるので、曲折はあるもののやがては、シングルサインオンがかなりの程度実現すると期待される。アプリケーション: 特定の利用者間での情報交換の方法は、ネット上の掲示板、メーリングリストから、ミクシィやfacebookのようなソーシャルネットと呼ばれるものに変わってきている。携帯端末の普及によりツイッターの利用も増加している。掲示板を代表とするコンテンツマネージメントシステムは広く利用されている。変化は激しいが、方向としてはより便利にかつ安全になってきており、これを取り入れつつより多くの利用者向けの情報共有の方法を追求していきたい。31情報システム研究部門・情報センター
元のページ ../index.html#41