創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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地域社会健康科学研究所大宮(現さいたま)支所は、自治医科大学附属大宮(現さいたま)医療センターが開設された1989年(平成元年)に当センター内に設置され研究が行われていたが、研究施設は2002年(平成14年)に当センター内からBSL研修施設に移転され再整備が行われた。新たな研究施設は総床面積が665m2と大幅に拡張され、従来の生化学実験室、生理学研究室、ストレスラボ、画像分析室、培養室および培養準備室、顕微測定室、暗室に加え、新たに遺伝子組み換え実験施設(P2)、電気生理学的研究用シールドルーム、動物飼育装置としての環境制御飼育装置(EBAC-L)および空気清浄装置(AQUA-CLEAN-LS)が整備され、研究のさらなる発展がみられた。支所は当センター長および支所長である百村の下に、阿部泰宣准教授と早田邦康准教授が研究施設運営の中心となり、総合診療科、循環器科、消化器科、神経内科、血液科、腎臓科、内分泌代謝科、アレルギー・リウマチ科、小児科、外科、脳神経外科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科など当センターに勤務している医師、大学院生およびポストドクターが実働研究員として多岐にわたる研究を推進している。当研究所における研究に対しては、(財)JKA(旧日本自転車振興会)からの競輪補助事業により、2002年(平成14年)から2011年(平成23年)までの10年間において計11点、総額3億6,000万円以上の高額で最新鋭の研究機器が整備され、基礎研究および臨床研究が遂行されている。本研究所の多くの研究員は臨床部門を兼務しているため、臨床における疑問点や仮説に基づいた研究が多く、その成果は臨床に反映されるものとなっている。研究所では定期的に研究報告会が開催され、研究の内容や進行度を検討している。研究成果は毎年着実に増加し、国際的医学学術雑誌に学術論文として数多く発表された。この10年間の主な研究課題は、虚血性心疾患の予防と治療に関する研究、動脈硬化の成因に関する血管生物学的研究(動脈硬化における分子レベルでの解明、血管内皮細胞保護に関する研究)、インスリン分泌機構に関する研究、糖尿病における血管内皮機能に関する研究、癌とDNAメチル化に関する研究、大腸癌の増殖・転移に関する基礎的・臨床的研究、ポリアミンと癌および免疫に関する研究、HTLV-1特異的細胞障害性T細胞に関する研究、造血幹細胞移植後の抗原特異的抗体に関する研究、造血器疾患の合併症に関する研究、クモ膜下出血(急性期脳損傷に対する脳保護、血小板作用、サイトカイン、電解質異常)に関する研究、頭頸部癌細胞におけるG蛋白共役レセプターギャラニン受容体の役割に関する研究、など一般臨床に応用可能な多岐にわたる研究が活発に行われている。また、当センターにはアジア各国からの留学生も在籍し、出身国との疾患と栄養に関する共同研究事業も行われ、その研究結果は出身国の保健医療行政に多大に貢献している。このことは、「へき地などの地域住民の疾病の特異性、病態生理および原因究明並びにその有効な対策の推進」という財団の目的を国際的に展開していることにほかならない。近い将来には研究施設の移転が計画され、さらなる発展が期待されている。34百村伸一地域社会健康科学研究所さいたま支所

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