創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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部 門研 究 内 容研 究 成 果VIII因子抗体が出現せず、抗体が出現した個体でもその力価は最高23.4BU/mLと低値であった。以上の結果から、胸腺組織への第VIII因子抗原暴露および細胞移植療法により、抗原特異的制御性T細胞が誘導され免疫寛容が成立する可能性が示唆され、血栓形成不全の制御に対する新規知見が得られた。FTY720(2-amino-2-[2-(4-octylphenyl)ethyl]propane-1,3-diol hydrochloride)は1994年に藤田らが子囊菌綱の1種であるIsaria sinclairiiの代謝物に由来する物質として発見した免疫抑制薬である。FTY720は免疫抑制作用を有する他にアポトーシス誘導作用も報告されている。最近ではFTY720の自己免疫疾患への治療効果も期待されている。FTY720を腎移植に用いた治験では、第Ⅰ相および第Ⅱ相試験で免疫抑制薬としての有用性が確認され、第Ⅲ相試験に移行している。この免疫抑制作用はFTY720がリンパ球のホーミングを促進させる作用により説明されている。投与後に生体内でリン酸化されたFTY720はsphingosine 1-phosphate(S1P)受容体のアゴニストとして作用し、S1P受容体刺激を受けたリンパ球はホーミングし、リンパ組織からの遊走が阻害される。これらの機序でFTY720は免疫抑制作用を発揮すると考えられている。一方、FTY720は免疫担当細胞であるリンパ球、T細胞あるいはB細胞cell lineおよび固形腫瘍細胞にもアポトーシスを誘導すると報告されている。FTY720誘導アポトーシスのシグナル伝達はミトコンドリア−Caspase(依存性)経路を介すると論述されているが、ミトコンドリア上流のシグナル伝達経路 (Intrinsic pathway) に関する研究は少ない。FTY720が誘導するアポトーシスは非リン酸化FTY720が惹起し、S1P受容体は関与しないとされている。FTY720と関連が深いスフィンゴシンや同じくスフィンゴ脂質であるセラミドもアポトーシスを誘導する。セラミド誘導アポトーシスでは、Mitogen-activated protein kinase(MAPK)がアポトーシスシグナル伝達経路として関与したとの報告が散見され、FTY720誘導アポトーシスでも同様の文献がある。セラミドとFTY720は化学構造が近縁であることから、類似したアポトーシス誘整備機器62

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