創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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部 門研 究 内 容研 究 成 果が低下するため、肝癌細胞内でタミKを介した活性型プロトロンビンの産生が不可能となり、PIVKA-IIが産生されることを証明した。我々の結果からPIVKA-II産生肝癌は形態変化を来し、移動能を獲得した肝癌であることが言える。このことは臨床で認められる現象(PIVKA-II産生肝癌は血管浸潤・転移が多いなど)に矛盾がない。我々の研究は、PIVKA-IIが単に肝癌の腫瘍マーカーとしてではなく、肝癌の形態変化を示すマーカーとして有用であるとの新しい見解を示した。また、肝癌の生態を考える上において非常に興味ある結果であり、将来的に肝癌の治療に貢献できると考えられる。以上の研究にあたり蛍光免疫染色が非常に大きな役割を果たし、補助金にて購入させていただいたKeyence社の顕微鏡はなくてはならないものであった。改めて財団法人JKA(競輪公益補助事業)に対し感謝の意を表したい。「組織定量システム一式」を用い、次の研究成果を得た。Spontaneously Diabetic Torii(SDT) ratの糖尿病(DM)性心筋障害の機序の解明:心筋細胞と毛細血管とのcross-talkをテーマとしてDM性心筋障害に心筋細胞(CM)とその栄養毛細血管(Cp)とのcross-talkがどのように関与するかを検討した。雄のSDT rat(S群)が血糖250mg/dlとなった時点をDM発症(0週)とし、同週齢のSD ratを対照(C群)として早期(8週)・後期(16週)の左室心筋の形態的解析を行った。その結果、早期S群ではCM面積・Cp数・PCNA陽性Cp数、低酸素で誘導される血管内皮増殖因子(VEGF)の発現はC群に比べ増加したが、後期S群ではCM面積とVEGF発現増加に加え、Cp数の減少、TUNEL陽性Cp数及び血管新生抑制因子のトロンボスポンジン-1(TSP)発現の増加を認めた。後期S群のみ有意な心筋線維化が観察された。S群は早期・後期共にC群に比べ血漿angiotensin II(AII)濃度の低下とCM内AII発現の増加を認めた。S群早期では、CM内で産生されたAIIによるCM肥大とそれに伴う相対的慢性低酸素状態を介してVEGFが過剰発現しCpを増やし代償するが、後期にはTSPがVEGFの血管新生促進作用と拮抗しCpをアポトーシスに誘導することで心筋線維化が出現することが判明した。整備機器72

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