創立40周年記念誌 地域社会振興財団
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部 門研 究 内 容研 究 成 果内腫瘍本研究は、慢性炎症性疾患の非癌部組織で観察される遺伝子修飾異常(DNAメチル化異常)の情報をもとに、癌のかかりやすさを予測しようとするものである。DNAメチル化異常は癌組織のみならず、非癌部組織でも認められるため、その情報を癌発症の予測や早期診断に利用する。我々が独自に開発したDNAメチル化マイクロアレイを用いる事により、網羅的に遺伝子異常、遺伝子修飾異常を捉えることが可能となり、分子生物学的な疾患プロファイルの作成が実現される。平成22年度は、潰瘍性大腸炎の癌部及び非癌部背景粘膜のDNAメチル化異常の網羅的検索を行った。担癌潰瘍性大腸炎:背景粘膜組織(CN群)6例、癌組織(CT群)6例と非担癌潰瘍性大腸炎粘膜組織(I群)16例を対象とし、「DNA array MS-AFLP」を用いてメチル化異常を検出した。また、Multi Experimental Viewer (MeV)を用いてメチル化プロファイルの比較、クラスタリング解析を行った。メチル化異常の頻度は、I群、CN群、CT群と段階的に増加した。各群の個々の遺伝子の相関を調べるため、クラスタリング解析を行い、メチル化プロファイルを比較すると、I群と比較して、CN群、CT群でそのプロファイルが類似する遺伝子群を抽出することができた。CN群、CT群に共通するメチル化異常断片は49カ所認められた。このうち、プロモーター領域に存在する19遺伝子は、担癌潰瘍性大腸炎:背景粘膜組織(CN群)では、その遺伝子発現は低下しておらず、癌組織(CT群)で発現低下が認められた。これらの遺伝子群は炎症の過程で、メチル化が広がるとともに遺伝子の発現が妨げられ、潰瘍性大腸炎の癌化に関わると考えられる。潰瘍性大腸炎における背景粘膜のメチル化異常を網羅的に検索することにより、発癌の危険性を評価しうると考えられた。また、他の疾患においても検索を進める予定である。DNAメチル化マイクロアレイを用いる事により、網羅的に遺伝子占う下垂体腫瘍の発生メカニズムを解明することは、将来の内科的外科的治療をサポートするうえで大変な意義を持つことはいうまでもなく、将来的には発生予防の観点からも重要な知見となることが期待される。整備機器78

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