部 門研 究 内 容イを用研 究 成 果事にり、網羅的に遺伝子異常、遺伝子修飾異常を捉えることが可能になり、分子生物学的な疾患プロファイルの作成が実現される。さらに、臓器固有の変化を血液細胞の変化と関連づけることができれば、検診の効率向上に大きく貢献できると考える。たとえば血液検査で、胃癌特有の遺伝子群に異常を認めた場合は、胃カメラ等の上部消化管検査の優先順位や頻度を変えることにより、検診の個別化が可能となり、それは医療費削減にもつながる。このプロファイルは癌のみならず、自己免疫疾患をはじめとする種々の臓器障害などの後天的疾患の発症プロセスに関与した予知医療マーカーとしての応用も期待される。胃癌の前癌病変である腸上皮化生は、胃粘膜上皮細胞の分化異常であり、腸型の上皮細胞によって正常の胃粘膜が置換されている。腸上皮化生の形成と胃癌の発生のメカニズムを解析する目的で腸上皮化生のモデル動物を作製した。腸上皮化生粘膜には腸上皮の分化に関与する転写因子であるCdx2が発現している。このCdx2を胃粘膜に特異的発現するCdx2トランスジェニックマウスを作製したところ、胃粘膜は腸上皮化生粘膜によって完全に置換され、この腸上皮化生粘膜から胃癌が発生した。そこで、この腸上皮化生の形成と遺伝子発現との関係を「胃癌組織遺伝子発現解析装置」を用いることにより明らかにした。腸上皮化生粘膜の形態変化と遺伝子変化との関係を明らかにする目的で、腸上皮化生のモデル動物であるCdx2トランスジェニックマウスを用いた。腸上皮化生の形成は腺管単位で行われ、胃粘膜内に1つの腺管全体が腸型の形質を表出する腸型の腺管が生後20日目に出現した。その後、生後30日から40日にかけて腸型の腺管が劇的に増加し、生後50日目に全ての腺管が腸型の腺管により置換された。このような腸上皮化生粘膜の形態変化が出現する以前に腸型の遺伝子の発現と胃型の遺伝子の発現低下が起きていることを明らかにした。競輪補助事業により整備した「クライオスタット」により凍結切片を作製した。また、遺伝子の発現量を検討するための予備実験として、同事業により整備した「サーマルサイクラー」を使用した。整備機器79
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